2014年10月21日
多古町立多古中学校(平川淳一校長、生徒368人)で20日、16日夜に町内で音楽コンサートを行った英国系シリア人ピアニストのワシーム・コトブさん(36)=カタール在住=が、今も内戦状態が続く古里シリアの激しい戦闘などを語った。生徒たちは建物が破壊されたリアルな画像を見たり、コトブさんのメッセージを聞きながら平和について考えた。
講演では、シリアの歴史や宗教、文化などをゆっくりと語ったコトブさん。首都ダマスカスなどの市民らが内戦下で日々の生活に追われていることや、空爆についても述べ、「もはや安全ではなくなった。この戦争で20万人が亡くなり、950万人が土地を失い、(国外に逃れた難民や国内避難民になるなど)全ての物が破壊された」。
シリアでは2011年から、中東の民主化運動「アラブの春」に触発された反体制デモが全土に拡大。アサド政権は弾圧に乗り出し、反体制武装勢力との間で衝突が激化した。勢力を拡大する過激派「イスラム国」の攻勢などもあり、現在も内戦は早期終息の兆しが見られず、事態は混迷を極めている。コトブさんは「皆さんは、いずれ大人になる。きょうの話を何度も考え、戦争を引き起こさないように考えてほしい」と力強く訴えた。
シリア情勢の話を聞き、3年の並木愛希君(14)は「あらためて日本は平和な国なんだと感じた。日本に生まれて良かったし、世界ではまだまだ悲惨な戦争が続いているんだなとも思った。戦争は絶対にやってはいけない」と振り返った。
その後、コトブさんがオリジナル曲などアンコールも含めて3曲を奏でるミニコンサートを披露。生徒たちは生演奏に酔いしれた。3歳からピアノを習っているという3年の塚本紗羽(すずは)さん(15)は「プロの演奏は強弱や1音、1音がきれいで、ピアノの音に引き込まれそうだった」と語った。